フレットノイズ 除去 ポストプロダクション
ギターレコーディングのフレットノイズを完全除去!ポストプロダクションで音源を生まれ変わらせる方法
ギターを録音したのに、フレットノイズが目立ってしまう——こんな経験、ありませんか?せっかく良いテイクが撮れたのに、フレットをスライドするときの「ザッザッ」という音が前面に出てしまうと、プロフェッショナルな仕上がりにはなりません。特に弾き語りやアコースティック系の楽曲では、このノイズが混音全体の品質を大きく左右してしまいます。
しかし、ご安心ください。ポストプロダクション(制作後の音声編集)の段階で、フレットノイズを効果的に除去する方法は複数あります。この記事では、10年以上のレコーディング経験をもとに、実践的で即座に使える除去技術をご紹介します。今日から実装できる具体的な手法から、プロが使う高度なテクニックまで、あなたのスキルレベルに合わせて選べる内容になっています。記事を読み終わる頃には、「あのノイズ、こうやって消すんだ」と納得し、次のレコーディングから自信をもって対処できるようになりますよ。
フレットノイズとは?なぜポストプロダクションで除去が必要なのか
フレットノイズとは、ギターの弦がフレット(ネック上の金属製の突起)に対して擦れるときに発生する「ザリザリ」「ザッザッ」という高周波のノイズです。特にスライドやポジション移動が多いプレイスタイル、あるいはコンデンサーマイクで近接録音したときに顕著になります。
なぜ、このノイズは発生するのでしょう?それは、弦が金属製フレットに接触する際の物理的な摩擦音が、ギター本体の共鳴によって増幅されるためです。スタジオで良い環境で録音していても、プレイの強さやテクニック、さらには弦の経年変化によって、このノイズは常に潜んでいます。
ポストプロダクションでの除去が必要な理由は、以下の3つです。
- ライブ感の損失を防ぐ — レコーディング段階での完全な防止は、奏者の自由度を奪う。本来のパフォーマンスを最優先にしながら、後から微調整できる
- プロフェッショナルな仕上がり — 商用楽曲やサムネイル動画では、このノイズが混じっているだけで「アマチュア感」が出てしまう
- 混音のクリアネス向上 — ボーカルやドラムなど他の楽器との調和が取りやすくなり、全体のバランスが整う
つまり、フレットノイズ除去はマストではなく、音のプロフェッショナル化のための選択肢として考えることが重要です。
ポストプロダクションで実践できる4つのフレットノイズ除去方法
では、実際にどのような手法でノイズを除去するのでしょう。ここでは初心者から上級者まで対応できる、4つの方法をご紹介します。
方法1:EQ(イコライザー)による高周波カット
最も簡単かつ効果的な方法は、EQで高周波帯域を削減することです。フレットノイズは主に3kHz〜8kHz帯域に集中しているため、この周波数帯を少し持ち上げて、その上の高周波をカットすることで、ノイズだけを目立たなくできます。
具体的な手順は以下の通りです。
ステップ1:グラフィックEQまたはパラメトリックEQを挿す DAW(Digital Audio Workstation)のプラグインメニューから、EQエフェクトを選択。Studio OneやLogic Pro、Cubaseなら標準のEQプラグインで十分です。
ステップ2:5kHz~8kHz帯域を-3dB~-6dB削減する パラメトリックEQの場合、中心周波数を5kHzに設定し、Qファクター(周波数の幅)を中程度に広げて、ゲイン(音量)を-3dB~-6dBダウンさせます。イヤフォンで聴きながら調整すると、フレットノイズが自然に背景に下がるはずです。
ステップ3:10kHz以上の高周波をさらにカット オプションとして、10kHz以上をハイシェルフで-2dB~-3dB落とすと、ノイズがさらに目立たなくなります。ただし、ギター本体の明るさも失われるので、やりすぎに注意。
メリット — シンプルで、ほぼ全てのDAWに搭載。リアルタイムで試聴可能 デメリット — ギター全体の高周波成分が失われやすく、トーンが曇る可能性がある
方法2:ノイズゲート・エキスパンダーで小さなノイズを制圧
ノイズゲートやエキスパンダーは、一定レベル以下の音を自動でカットしたり減衰させたりする機能です。フレットノイズは、メインのギター音量より小さいため、これを利用して効果的に除去できます。
使い方のコツは以下の通りです。
ステップ1:エキスパンダーを選択 ノイズゲート(完全カット)より、エキスパンダー(緩やかな減衰)を推奨。完全カットは不自然な音になりやすいためです。
ステップ2:閾値(スレッショルド)を設定 エキスパンダーの閾値を、フレットノイズだけがひっかかるレベルに調整。一般的には-40dB~-35dBが目安ですが、録音レベルによって異なります。
ステップ3:レシオ(減衰率)を2:1~4:1に設定 レシオが小さいほど自然な減衰。4:1以上だと、不自然な音量変化が生じやすいので避けましょう。
ステップ3:ホールドタイムとリリースタイムを調整 ノイズゲートが反応するスピードを調整。リリースタイムが短すぎると、ギター本体の余韻も削られるので注意です。
メリット — ギターのトーンを損わない。ノイズだけを自動検出・カット デメリット — 設定が複雑で、微調整が必要。初心者には敷居が高い
方法3:スペクトラル編集で視覚的にノイズを除去
スペクトラム表示(周波数と時間を2次元で表示)を使い、視覚的にノイズを識別・削除する方法です。Adobe AuditionやiZotope RX(後述)といった専門ツールなら、フレットノイズを「線」として認識でき、マウスでそれを削除できます。
具体的な流れは以下の通りです。
ステップ1:スペクトラムビューに切り替える AuditionやRXの「スペクトラム」タブを選択。音声がスペクトログラムとして表示されます。
ステップ2:フレットノイズを視認 スライド音が「横線」として表示されるため、ギター本体の音(より低周波で、複雑なパターン)と区別しやすいです。
ステップ3:ノイズペイントツールで該当部分をペイント RXなら「Spectral Repair」、Auditionなら「Healing Brush」といったツールで、ノイズ部分を指でなぞります。AIが周辺の音声パターンを学習し、自動で補間してくれます。
メリット — 最も精密な除去が可能。ギター本体への影響が最小限 デメリット — 専門ソフトが必要(有料)。時間がかかる
方法4:複数の方法を組み合わせたハイブリッド除去
プロの現場では、上記の方法を複数組み合わせて使うのが一般的です。例えば、以下のような手順です。
- EQで全体の5kHz~8kHzを-2dB~-3dB削減 — 全体のノイズを控えめに
- エキスパンダーで小さいノイズをさらに制圧 — 小さい「ザリ」音が消える
- 必要に応じてスペクトラル編集で目立つスライド音を手動除去 — 最後の仕上げ
メリット — 各手法の弱点を補完。自然で高品質な仕上がり デメリット — 技術と経験が必要。試行錯誤の時間がかかる
フレットノイズ除去で気をつけるべき失敗と成功のコツ
よくある失敗
失敗1:高周波をカットしすぎる ギターの明るさや響きまで失われ、「こもった音」になってしまいます。-6dB以上のカットは控えめに。
失敗2:ノイズゲートの閾値を高くしすぎる ギター本体の弱い音まで切られ、アタック感がなくなります。段階的に調整しましょう。
失敗3:1トラックだけに適用して、他のトラックと音色が合わない 複数のギタートラックがある場合は、全トラックに同じ設定を適用し、統一感を持たせることが重要です。
成功のコツ
【コツ1:複数の参考曲と比較しながら調整する】 除去前後で、プロの楽曲(同じジャンルの商用録音)と聴き比べることで、「どの程度までなら自然か」の感覚が磨かれます。
【コツ2:小さいスピーカーとヘッドフォンの両方で確認する】 EQの効果は再生環境に大きく左右されます。スタジオモニタースピーカーとヘッドフォンの両方で、ノイズが適切に除去されているか確認してください。
【コツ3:除去は控えめに。「100%完全除去」は目指さない】 少量のフレットノイズが残っている方が、むしろ「生のギター感」が出て、音楽的に自然に聞こえることも多いです。除去の目標は「邪魔にならないレベルまで控えめにする」くらいで十分です。
【コツ4:録音段階での対策も視野に入れる】 ノイズを消すのは後処理ですが、最初から減らす工夫も重要です。新しい弦を張る、マイク位置を工夫する、プレイ時に指をしっかりミュートするなどで、ノイズの量そのものを減らせます。
まとめ
フレットノイズ除去は、ポストプロダクションの重要なスキルです。記事の要点をまとめると以下の通りです。
1. フレットノイズとは — 弦がフレットに擦れるときの摩擦音で、3kHz~8kHz帯域に集中している 2. 除去方法は4つ — EQ削減(簡単・初心者向け)→ノイズゲート(中級)→スペクトラル編集(高度)→組み合わせ(プロ向け) 3. 成功のコツ — 控えめな除去、複数環境での確認、録音段階での対策が重要
次のアクションプランとしては、以下のステップを推奨します。
- 手持ちのギター音源を開き、EQで5kHz~8kHzを-3dB削減してみてください
- 前後で聴き比べ、「ノイズが控えめになるか」を確認
- 気に入ったら、エキスパンダーも試して、組み合わせの効果を体感してみる
- 余裕があれば、スペクトラル編集ツールも検討してみる
最初は完全除去を目指さず、「邪魔にならない程度にする」くらいの感覚で取り組むと、自然で プロフェッショナルな音源に近づけますよ。あなたのレコーディング作品が、さらに輝く日も近いでしょう。
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