147. テクノ シンセ パッド サウンド

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音楽

テクノシンセパッドサウンドの作り方|初心者でも深みのある音を実現する実践ガイド

テクノミュージックを制作していると、あの独特の厚みのあるパッドサウンドがどうやって作られているのか、気になりませんか?漠然と「いい音だな」と思っていても、自分のシンセで再現しようとするとうまくいかない…そんな経験をしている方は多いと思います。

実は、テクノのシンセパッドは特別な機材があれば作れるわけではなく、正しい音作りの原理と設定のコツを理解することが最も重要です。この記事では、初心者でも実践できる方法を通じて、プロのような深みのあるテクノパッドサウンドを作る方法をお伝えします。読み終わる頃には、あなたもスタジオクオリティのパッドを自分のトラックに組み込めるようになりますよ。

テクノシンセパッドとは?音作りの基本概念

テクノシンセパッドは、シンセサイザーで生成した音に空間系エフェクトを加えて、浮遊感や奥行きを表現する背景音のことを指します。通常のシンセ音と異なり、立ち上がりが緩やかで、長く響き続けるのが特徴です。

テクノミュージック、特に90年代後半から2000年代初期のミニマルテクノやアンビエントテクノで頻繁に使用されています。ハウスミュージックのパッドと比べると、テクノパッドはより冷たく幾何学的で、時間とともに音が変化していくという特性があります。

なぜテクノの制作でパッドが重要かというと、ドラムやベースといったリズムセクションの上に乗せることで、曲に深さと広がりを与えるからです。同じドラムループでも、パッドが入るのと入らないのでは、聴き手の印象が劇的に変わります。また、パッド音そのものが曲のムードを決定づける要素になるため、音作りの質がトラック全体のクオリティに直結します。

テクノパッドに必要な3つの要素

テクノシンセパッドの魅力を引き出すには、3つの重要な要素があります。これらを理解することが、音作りの第一歩です。

1. 波形選択とオシレーター設定 パッドの基礎となるのは、どの波形を選ぶかです。テクノパッドに適した波形は、ノコギリ波(Saw Wave)パルス波(Square Wave) です。ノコギリ波は豊かな倍音を含むため、フィルターで加工するのに最適です。一方、パルス波は角ばった音質になり、より電子的でテクノらしいキャラクターが出ます。

複数のオシレーターを組み合わせると、さらに複雑さが増します。例えば、オシレーター1を1オクターブ下げて、オシレーター2と混ぜることで、ずっしりとした低域を持つパッドになります。デチューニング(微妙に周波数をずらす)も効果的で、わずか5〜15セント程度ずらすだけで、太さが大幅に増します。

2. エンベロープ(ADSR)設定 パッドの時間的な変化を決めるのが、ADSRエンベロープです。テクノパッドの典型的な設定は以下の通りです。

  • Attack(立ち上がり): 500ms~2000ms(緩やかに立ち上がる)
  • Decay(減衰): 1000ms~3000ms(一度ピークから下がる)
  • Sustain(保持): 50~80%(保持音量は比較的高め)
  • Release(リリース): 1000ms~3000ms(ノートオフ後もゆっくり消える)

特にAttackを長めに設定することで、あの「ふわりと現れる」感覚が生まれます。Sustainを高めに設定しておくと、ノート全体を通じて安定した音量で鳴り続けるため、背景音として機能します。

3. フィルターと周波数処理 シンセのLPF(ローパスフィルター)を使って、高域を適度にカットすることが重要です。テクノパッドは明るすぎず、適度に丸みを帯びた音が特徴です。

カットオフ周波数を800Hz~3000Hzの範囲に設定し、レゾナンス(共鳴)を20~40%程度加えることで、シンセパッドに独特の響きが生まれます。また、エンベロープジェネレーターでフィルターを制御すると、時間とともに周波数特性が変わり、より動的なサウンドになります。

テクノパッドを実際に作ってみよう|ステップバイステップガイド

では、具体的にシンセパッドを製作するプロセスをお伝えします。以下の手順に従えば、初心者でも実践できます。

ステップ1: 基本となるシンセを選ぶ

まず、シンセサイザーを立ち上げてください。Native InstrumentsのKompleteシリーズ、Serum、またはお手持ちのDAWに付属するシンセであれば十分です。テクノパッド作成には、特に高度な機能は不要です。むしろ、波形選択、オシレーター、フィルター、エンベロープといった基本機能がわかりやすいシンセの方が、学習しやすいでしょう。

ステップ2: オシレーター設定で基本の音を作る

  1. オシレーター1をノコギリ波に設定します
  2. オシレーター2も同じノコギリ波を選び、オシレーター1より1オクターブ下げます
  3. 両方のレベルを50%ずつ(またはオシレーター1を70%、オシレーター2を30%)に設定します
  4. わずかにデチューニング(10セント程度)して、厚みを出します

この時点で、既に立派なパッド用ベース音ができています。

ステップ3: エンベロープを設定する

シンセのAmplifier Envelope(またはメインエンベロープ)を以下のように設定してください。

  • Attack: 1500ms
  • Decay: 2000ms
  • Sustain: 70%
  • Release: 2000ms

キーボードを押さえたままホールドして、音の立ち上がりと持続を確認してください。緩やかに現れ、しばらく同じ音量で響き続けるはずです。

ステップ4: フィルターでキャラクターを作る

ローパスフィルター(LPF)のカットオフを2000Hzに設定します。レゾナンス(またはQ値)を**30%**程度にしてください。次に、フィルターエンベロープを以下の通り設定します。

  • フィルターエンベロープ強度(Depth): 50~70%
  • フィルターAttack: 500ms
  • フィルターDecay: 3000ms
  • フィルターSustain: 0%

このように設定することで、音が立ち上がる過程で高域が徐々に削られ、より奥行きのある響きになります。

ステップ5: DAWでのエフェクト処理

シンセの音をDAWに戻し、以下のエフェクトを挿し込みます。

リバーブ: アルゴリズムは「ホール」または「プレート」を選択し、プリディレイを100~200msに設定します。ウェットレベル(エフェクト音の比率)を30~40%にすることで、空間感が出ます。

ディレイ: 1/4ノートか1/8ノートの音符に同期させ、フィードバック(反復回数)を30~50%にします。これにより、パッドに揺らぎと時間的な広がりが加わります。

コーラス: 深さ(Depth)を浅めに設定し、Rateを0.5~1Hzに設定することで、パッドの厚みが増します。

これら3つのエフェクトを併用することで、プロのテクノパッドのような立体感が生まれます。

よくある失敗パターンと解決方法

テクノパッド制作で初心者がつまずきやすいポイントをお伝えします。

失敗1: 音が薄っぺらい、または存在感がない これは通常、オシレーター数が足りない、またはデチューニングが不足している場合です。解決策としては、オシレーターを3~4個使用し、それぞれを微妙にデチューニングすることです。また、エフェクト(特にリバーブ)のウェットレベルが低すぎないか確認してください。テクノパッドはエフェクトありきの音なので、ドライ音だけでは判断しないようにしましょう。

失敗2: 音が高すぎて耳障り フィルターカットオフが高すぎるか、レゾナンスが過度に強い場合に起こります。カットオフを800Hz~1500Hz程度まで下げ、レゾナンスを20%以下に抑えてみてください。また、EQでシンセの出力に対して2~5kHz帯域を軽くカットするのも効果的です。

失敗3: 発音が突然で不自然 Attackが短すぎることが原因です。少なくとも1000ms以上に延長してください。また、フィルターエンベロープのAttackも同期させることで、音の立ち上がりがより自然になります。

失敗4: 他の音と混ざると埋もれてしまう ボリューム不足の可能性があります。パッドはバックグラウンド要素ですが、完全に聞こえないのは問題です。DAWのマスターフェーダーに対して、パッドを-6dB~-3dB程度に調整し、ドラムやベースのレベルと相対的なバランスを取ってください。

テクノパッド制作での成功のコツ

実際のプロデューサーが実践している、ワンステップ上のテクニックをご紹介します。

コツ1: 複数パッドの多層化 単一のパッドではなく、異なる2~3つのパッドを組み合わせることで、複雑さが大幅に増します。例えば、低域を担当するパッド、中域のパッド、高域にかすかに響くパッドを同時に再生させることで、リッチな音場が作られます。

コツ2: オートメーションの活用 DAWのオートメーション機能を使って、時間とともにパッドのボリュームやフィルターカットオフを変化させることです。例えば、8小節ごとにフィルターカットオフを少しずつ上げていくと、曲に緊張感と動きが生まれます。

コツ3: サンプリングと再サンプリング 作ったパッドをオーディオファイルとして書き出し、別のシンセでサンプルとして読み込み、さらに加工するという手法です。これにより、予測できない有機的な変化が音に加わります。

コツ4: ボイシング(和音構成)の工夫 パッドに使う和音を、通常の三和音だけでなく、付加9度(add9)や11度の音を含めることで、モダンで複雑な響きになります。C–E–G–B(7th)–D(9th)のように、複数のオクターブにまたがる音を組み合わせると、より深いサウンドスケープになります。

まとめ

テクノシンセパッドは、波形選択とオシレーター設定、適切なエンベロープ、フィルター処理、そしてエフェクトの4つの要素を理解することで、誰でも作成できるようになります。

記事の要点をまとめると:

  1. テクノパッドの基礎: ノコギリ波やパルス波を使い、複数のオシレーターを組み合わせる
  2. エンベロープ設定: 立ち上がりを長め(1500ms以上)に、持続を高め(70%以上)に設定
  3. 実践的なステップ: シンセ設定→エンベロープ→フィルター→DAWエフェクトの順で進める

今すぐあなたのDAWを開いて、ここで学んだ設定をあなたのシンセで実装してみてください。最初は完璧でなくても構いません。何度も試行錯誤することで、耳が育ち、より良い音を作り分ける能力が身に付きます。テクノ制作のための基礎知識として、このパッド音作りはとても重要です。ぜひこの機会に習得して、あなたのトラックに深みを加えてくださいね。

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